【船落の夕暮れ】
2009年 7月 8日 ワトソン紙 筆ペン
≪アルコの日記 始まりの瞬間≫
『栓抜きの儀式』の前日。 少女は「私は希望になる」と言った。人知の及ばぬところへ希望を託すことがまったく愚かであるならば、人はいつか必ず行き止まりへつきあたる迷路を進んでいるようなものではないかと。少年は黙って聞いていた。 マストの上から気配を殺して見下ろしていた、少女の妹は思う。希望も生も死も、人の心も全て姉のものだ。 泣きたくなるような夕焼けの中。